手抜き主婦ヒトラー第3話

 手抜き主婦。人は私をそう呼ぶ。夫の実家(広島)に帰ると、長男の嫁に
変身する。ご飯の支度から後片付けまで、自分でも感心するくらい良く働く。
夫はここで働かなくていいから、自分家で働いて、と文句を言う。それでも、
見破られてしまうのだ。姑は夫に「ご飯ちゃんと食べさしてもらっているの?」
と心配していたらしい。どんなによく働いても、包丁はうそをつかない。私の
ぶきっちょぶりが、姑の目にとまってしまったようだ。
 料理の本を見なくて良いのはカレーと味噌汁くらい。調理時間20分と
あったら、40分はみなくてはならない。私がじゃがいもの皮を剥いていると、
夫は「あーちっちゃくなっていく」と横槍を入れる。Lサイズのじゃがいもが
Mサイズになる。我が家の食卓で、日本の朝ご飯のような「トントントン」
という包丁の小刻みで心地よいリズムは聞こえない。実家で苦手な
ピーマンをきったのがまずかった。盆正月は包丁注意報を出そう。